木下唯志社長によると、タイでは森林の乱伐ですみかを奪われ、野生象が激減。最新の調査で確認されたのは約6千頭で、10数年前のほぼ半数という。木下サーカスではワシントン条約で象の売買が禁止された後の昭和62年、タイ政府の許可を得てショーに出演する象の契約を結んだ。以降、保護目的で収益の一部を贈り続け、総額が昨年までに約1千万となったため、病院建築に生かすことで政府と合意した。ランパンはタイ第二の都市・チェンマイから数10キロ南の村。病院(約6百平方メートル)は、象の保護・繁殖施設「国立エレファント・コンサーバティブセンター」内に建設された。最新の手術施設を備え、チェンマイ大学の獣医らスタッフ約10人が常駐。小川やジャングルに囲まれ、治療とリハビリに最適の環境という。開院直後、ビルマ(現ミャンマー)との 国境地帯で地雷を踏み、左前足を失ってひん死だった象が緊急入院。手術をし、義足作りを急ぐなど早速、活躍している。
12月27日、現地で開かれた開院記念式典にはタイ政府の要人も多数出席。木下社長は、ファヤクピチェン観光庁長官から「象の保護を通じ、動物愛護の心と両国の友好を深めましょう」と謝辞を受け、記念の盾を贈られた。
木下サーカスは今後も寄付を続けるという。創立百周年を迎える2年後には故郷・岡山での公演を計画中で、木下社長は「象は一番のアイドル。子供に夢を与え続けるため、保護に一層取り組みたい」と話している。